2014年1月17日金曜日

狸と山鳩とキンカン

気がつくと、山小屋の庭に2匹の狸がうろうろしている。見るのも忍びないほどやつれて、あのふさふさしていた毛が抜け落ちていかにも寒そうだ。
落ち葉を掻き分けてえさでも探しているのだろうか。
昨年の夏、むくむくとした親狸が小狸をくわえてお尻をふりふり引越しをしていた姿を見かけたが、あの親子だろうか。
しばらく徘徊して、下の石畳に続く、私が作った道をよろよろと帰っていった。
翌朝、今度は3羽の山鳩がえさをつついている。こちらは丸々としていかにも美味しそうである。
子供の頃、祖父が朝早く鳩撃ちに出かけ、祖母がその鳩を使ってバラ寿司にしてくれたのを思い出したのだ。

その午後、村の住人を呼んでコーヒー会議を開いて報告していると、名古屋の爺さんが「ほれ何か動いているよ、狸じゃないの?」と庭を指差す。
東京の爺さんが足音を忍ばせて窓によって覗くと、今日は子狸らしい固体が昨日えさを探していた場所で落ち葉に鼻を突っ込んでいる。
「かわいそうなくらいにやせているね」とほぼ同時に感想を漏らす。
「この時季食べるものがないのでしょうねえ!」と私。

「こんなものを食べますか?」とキンカンの砂糖煮を出すと、東京のじいさんが「すっぱいんでしょ!」と早くも警戒態勢。名古屋の爺さんが楊枝でつついて食べて「こりゃあ、美味い」と叫ぶとようやく食べて「いかん、止まらなくなる」とにらむ。
「このキンカンは宮崎産です。この時季になるとお袋が必ず作ってくれたものです。懐かしいふるさとの味です」とウンチク。
二人とも始めての味に感嘆しきり。小さなタッパに入れてお土産にした。