その昔、印刷関係の仕事をしていた頃、わが社の担当者をしていた営業マンがどうしたわけかちいさなレストランを始めた。
「お前がやれるほど甘くナインじゃないか!」と冷やかしながらも、時々出かけては油を売りつつ売り上げにも協力してきたが、次第に足も遠のき、先日久しぶりに行ってみた。
驚いたのは、まだ店が続いていたことと、開店当初アルバイトに来ていた可愛い女子大生が、もう卒業して養護施設に就職したはずなのに、エプロンをして立っていたことだった。
私が「??」という表情をしたのであろう、マスターが「でもどりです」といい、女の子は下を向いて少し笑っているような仕草をした。
「確か、子供の養護施設に就職したんだったよね」というと、わずかにうなづいて「はい」と言って下を向く。この子は沖永良部から別府に来たのだったと思いだした。
「随分きつい仕事のようですね。まるで自分の時間はないようです。給与も安いんですが、そんな問題ではないと言うんですよ」とマスターが説明。
別府は母子家庭や父子家庭、育児放棄の家庭が多いと聞いたことがあり、宗教団体の養護施設もかなりあるようだ。地方自治体の補助金と寄付などで運営しているのか、スタッフの境遇は余り恵まれているとはいえないようだ。
昼飯時になり、自分の分と女の子の分を作ってくれるよう頼んで、スケベ心とわずかな義侠心のようなものを発揮した時、電話が鳴って「一人芝居の台本を持っていくので、解説のようなものを書いてくれ」と言う依頼。この電話の主はマスターの元部下になる。
現れるなり「実は急ぎです。原稿料はありません!」と、当然のように言う。「その代わりここの代金は持ちます。」と言うので「この可愛いこちゃんの分も入っておるんど」と脅しにもならないことを言って、仕方なく台本を読み、あらすじのような、解説のような原稿を書いて「あとは知らん、好きなように料理せい、何しろノーギャラじゃけんね!」と言ってやった。
「今日はこんな客ばかりだから」とでも言われたのであろう、「今日はもう上がります、ご馳走様でした。」と言う女の子の背中に「がんばるのよ!」と声をかける。
なにやらいいことをしたような気分の、半日。
沖永良部島、二度行きました。人を疑うことのない人情豊かな島の方々、大好きな場所です。島出身の可愛い子ちゃんに「めげないでー。負けないでー」とエールを送りたいです。
返信削除ありがとうございます。沖永良部、行って見たくなりました。南の島は、沖縄と奄美大島しか行ったことがありません。昔、ずーっと昔、種子島出身の女の子に淡い気持ちを抱いたことを思い出しました。
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