「ようやく校正があがったぞ」という連絡を受けて、N先生のお宅に伺った。
こういっては何だが、自分で書いた原稿なのにものすごい量の手直しである。付箋が一杯ついているし、新たに紙を貼り付けて挿入も一杯ある。
「先生大変でしたね。やはり読むたびに欲が出てくるのですね」というと、黙ってこくりとうなずくだけ。となりで奥様が「ほんとうにごめんなさいね。もうきりがないのよ」とおっしゃる。
「ところで、文字の大きさだがね、これくらいの大きさにならないかね」と、ほかの歴史書を示して、かなり強い口調で言われる。「先生はまだ目がいいのですね。私なんかこの大きさでは読みづらいですね」というと、又奥様が「そうですよ、自分でも読むのに苦労してるんですよ」と暴露。
「失礼ですが、文字を大きくすると安っぽくなると思っているのですか」というと、又奥様が「その通り。かっこつけているんです」とずばり。
「うーん、でも他のこの手の本は字が他の本より小さいんだよなあ」と悩ましげである。
奥様がお茶を入れ替えにたって戻ってきた時に「お母さん勝ちましたよ、この大きさで行きます」と報告すると、「ああ良かった。」と喜んでくださった。
30年位前、この奥様がサイホンで淹れてくださったコーヒーがとても美味しかったのを思い出した。
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